水甕の水の深さ
堀江メールをめぐる注目の党首討論、午後3時からの生中継、なんと全部見てしまった。暇なんだ、結構。

前原代表が結局、新しい証拠を出すことはなかった。前原代表は、「メールの問題も含め、様々な情報から、資金提供が武部幹事長の次男を通じてなされたのではないかとの確証を得ている」と指摘し「具体的な金融機関、口座名、口座番号もしっかり提示する。なぜ国政調査権を発動しないのか。後ろめたくなければ、国政調査権に応じて、白日のもとに明らかにすればよい」と迫った。これに対して小泉首相は「国家権力の行使は極めて注意深く、慎重にしなければならない」と強調。その上で「メールが本物だという証拠を出せば、国政調査権を行使するまでもない」と民主党側にさらなる証拠の提示を要求した。

前エントリーで、僕は、授受は現金に決まっている、と書いてしまい失笑された方も多かっただろうが、昨今はメールで指示して銀行振り込みなのだろう。でも証拠が絶対残ると思うのですが。前原代表は、国政調査権とセットでなければ「にぎりつぶされる」と切り替えしている。つまり自民党は先に口座名を、民主党は先に国政調査権を発動せよ、というわけで相変わらず平行線だった。正直がっかりだった。で、どう「にぎりつぶす」のか僕にはどうにもわからないのだが。

見終えて印象的だったのは、前原代表の自身に満ちあふれたその表情である。小泉首相を睨みつけながら見下ろすように「後ろめたくなければ、国政調査権に応じて、白日のもとに明らかにすればよい」と言うときの迫力はまさに鬼気迫るものがあった。もしこれが虚勢ならばこの人は政治化を辞めて役者にでもなったほうがいいんじゃないか、とさえ思ったほどだ。だが僕は前原代表を信じたい。それは日本人を信じたいからに他ならない。日本という国に向いてようが向いてなかろうが、やはり2大政党制で民主党にはまずがんばっていただきたいのだ。もし今日のが虚勢ならば、なんだかこの国は中身のない張りぼてのようなものか、と思えてしまう。権力に刃向かう野党の党首がこの程度なら、結局この国もその程度か、ということになってしまうだろう。

水甕の水の深さの国家かな    久保純夫

国家とは畢竟、その国家を形成する水甕の、水の深さ、でしかないのだ。それよりも浅くもならないし深くもならない。水甕というのはその国民が永い時間をかけて作る器だろう。そこに水を湛えて、それでできるその水の深さが結局、国家というものに他ならない。つまりその器はどのような大きさでどれぐらいの深さがあるのか。それは今まで日本人が歴史で積み重ねてきた上での、大きさ、深さであるはずだ。

さてそこに湛えられた水はどの程度の深さなのか。民主党代表の、というより最大野党の思惑がどの程度なのか、いったい何枚岩なのか、堀江メールの行方に、それがかかっているといえば大げさだろうか。

とにかく僕は日本人を信じたい。



<追記>
まさかとは思っていたが、かのメールはニセモノだった、百歩譲って本物とは立証できなかったとは、なんと!
僕は知らなかったが、あの永田議員というのはとんだ札付き議員ということだ。ちょっと前、耐震偽装問題のとき、被害者がマンションに火をつけるかもしれない、と触れ回った奴はなんとこいつだったのだ! 他にもいろんな問題を起こしていたらしい。とんだ食わせ物に肩入れしたものだ。こんなことで久保さんの句を引用してしまうとは、僕もうっかりタケベーならぬうっかり八兵衛となってしまった。久保さんごめんなさい。もっといい場面で、この社会性俳句の最高傑作を使わせてもらいますので。

しかし
メールはニセでも、中身は本物らしい。でないと巨人の渡辺オーナーに口利きしたりしないよね。だから永田議員も辞職して、うっかりタケベーも辞職、ということで、双方痛み分けということで収まりそうです。というかこの二人には即刻辞めていただきたい。でないと日本の政治が非常に次元の低いものになってしまうし、目障りでしかたない。
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BSE問題のまとめ
週一回のエントリーでトロトロとブログを運営していると、世の中はあっという間に先に行ってしまっていて、書きたいことがなかなか書けないままになる。次々にいろいろなことが今の世の中は起こるのだ。
大雪と温暖化との因果関係を書くつもりで調べていたのだが、結局暖かくなってきてしまい時機を逸した。それはそれでもちろん良いことなのだが。

とりあえず、今日の国会での堀江から武部への裏金の話。与謝野馨金融担当相の指摘が一番納得がいった。「ないことを立証することは大変難しい、あるということを是非立証していただきたい」というようなことを言って民主党に釘を刺した。尤もである。この件は重要なことなので、是非証拠を突きつけていただきたい。だいたいそんなやばいお金を銀行振り込みするわけがない。振込みの有る無しを「ない証拠」として出してきた、武部サイドは逆に絶対に怪しいわけで、そんなお金は証拠が残らないように現金で直接渡すだろう、部下から部下に。民主党の永田議員には政治生命をかけて是非がんばっていただきたい。絶対に渡しているのである、間違いなくその3千万円は。でもなんだか民主党の言い方は冴えないね、このところずっと。

さて、こっちはこっちで、またトロトロと牛肉問題をやる。やりかけた以上終らないと次へ進めないのだ。

この問題、前回前々回にいろいろとデータを使い、書いたが、一部ニュアンスの違う書き方になっていたようだ。特に前々回、BSEは牛から牛にはうつりにくい、というふうに書いてしまったが、実際はもちろん大変蔓延しやすい。データは間違っていなかったが、データの読み方を間違っていたわけだ。BSEは100頭に3頭しかうつらない、と書いていたが、100頭に3頭もうつるのである。この書き方がこの病気に関しては適切だろう。イギリスでいったい何頭の牛がいるのかそのデータを引き出せなかったが、アメリカは1億頭、というデータがあった。人口はアメリカ3億人に対して、イギリス6千万人である。同じ牛肉大好き民族だから、イギリスの牛は単純に人口比で2000万頭ぐらいと予測しておく。イギリスで結局約100万頭の牛がBSEに感染しているから、このデータだと100頭に5頭である。100頭に3頭とそう大差はないが、要するにこれだけの数がうつるのである。これは牛からすれば大変な脅威だ。だがこれが人間にうつる変異型クロイツフェルト・ヤコブ病となるとたったの150人余りである。イギリス全土でBSEが蔓延している間に約70万頭のBSE感染牛が食用に供されたということだ。それで150人。これはBSE牛約4500頭につき変異型クロイツフェルト・ヤコブ病患者1人、ということになる。もちろんこれはBSE牛が一頭しか出なかったからといって、変異型クロイツフェルト・ヤコブ病がゼロだということにはならない。BSE牛が一頭につき4500分の1で1人発症する確率である。だが大変低い確率だ。それももちろんそのBSE牛を処分せずに危険部位がそのまま流通した場合である。
要するに結論を言うと、牛から牛へは大変蔓延しやすい病気だが、牛から人へは種の壁がかなり高く、まずうつらない、ということだ。これは断言していい。イギリス人がその民族を犠牲にして立証してくれた貴重なデータである。こんなデータは今後絶対に取れない。
それと今まで実験や実際の例で、BSEの感染が認められた最年少の牛は生後21ヶ月である。だがこれはたった一頭で極めてまれな例だ。30ヶ月以下ではまずほとんど認められない。それがどこの国であれ、生後20ヶ月以下で危険部位を取り除いた場合の人にうつる確率はその分母がおそらく天文学的な数字になるに違いない。何度も言うがリスクゼロの話はこの世にはない。今あなたがこのブログを読んでいるその部屋に飛行機が墜ちてくる確率はやはりゼロではない。分母が天文学的数字の確率なだけで、それはゼロではない。でもおそらく飛行機が墜ちてくる確率のほうがまだ高いのじゃないかな。

問題は牛から牛への感染である。牧場主にとっては大変な脅威だ。
イギリスでは、これまで生後30ヵ月以上の牛は 全て、つまり全部で500万頭を処分した、というデータがあった。つまりBSEにかかわらず焼却処分したのである。牛にとってはたまらないことだが、人間にとっては必要なことだったのだ。この件で動物愛護団体から抗議はなかったのだろうか。実際ホロコーストも真っ青なのだが。
しかしそのせいもあって世界中の牛がクリーンアップされたことは間違いない。牛骨粉入りの飼料も厳しく取り締まりされていて、牛が牛を食うという共食いはほとんどなくなりつつあるはずだ。もちろん規制をかいくぐってそういった飼料を流通させている輩はいるだろう、でもその飼料が汚染されている確率は低いし、もし汚染されていても飼料の取締りが厳しければ、それでBSEが蔓延するということはほとんどありえない。ひとえに飼料を監視することにかかってはいるが。

そしてBSEはやがてこの世からなくなるはずだ。だがこの場合重要なのはBSEがどこからやってきたか、である。この究明は想像以上に重要だろう。なぜなら一旦BSEがなくなってもまたその由来によってはまた発症する可能性があるからだ。

BSEの由来は今も羊のスクレイピーから感染したとする説が一応有力ではある。それと僕が前回のエントリーで立てた仮説である、牛自身の孤発性BSEが原因したのではないかという説も本当にある。ちょっと驚いた。だがどれも決め手にはかける。羊から牛への感染実験は何度も繰り返されているらしいが、納得のいく結果が一度も得られていないとのことだ。つまりスクレイピーが牛の体内に入ってちゃんとBSEにはならないのである、一度も。近い症状は出るらしいが。あと僕が言った、牛自身の孤発性BSEも、それがなぜ20世紀後半のイギリスだけに限られたのか、到底説明できそうにない。もしそうならあらゆる地域あらゆる時代に発生していたはずだからだ。
ここに来て最も有力な説が浮上してきた。ただしここから先は完全にオカルトである。この病気はただでさえオカルト的だが、これはもう正真正銘のオカルトである。だから心臓の弱い人はここからは読まないほうがいい。

それはBSEの孤発性クロイツフェルト・ヤコブ病起源説である。つまり人の孤発性クロイツフェルト・ヤコブ病が牛にうつってBSEになったわけである。ありえない、と誰もが思う。概要はこうだ(参照

1960年代から1970年代にかけて、イギリスでは様々な哺乳類由来の骨や死体の様々な部分を動物の餌の原型として輸入していて、ほとんどはインドあたりからだった。インドではガンジス川などに人の死体を捨てる風習があって、その中に孤発性クロイツフェルト・ヤコブ病の患者がいた可能性は否定できないわけで、というかあっても不思議ではないわけである。イギリスが輸入する動物の死体や骨の中に人の死体が混じっていたことはまず間違いないらしい。だからイギリスでは人の死体の混じった飼料を牛に食べさせていたわけである。それが汚染されていた可能性は否定できない。それとインドあたりからこういった輸入をやっていたのはイギリスだけなのである。だからイギリスにこの時期BSEが突如発生したことの今や最も信頼できる説らしいのだ。人から牛にうつったのだったら、当然牛から人にうつるわけである。納得である。

TSUTAYAへ行って、「一番怖いホラー映画はどれ?」と店員に聞いて、借りてきて見るより、個人的にはこの話のほうが怖いと思う。



<追記>
牛から人へは感染しにくいと言っといて、何故そう簡単に人から牛へ感染するのか、というクレームが来そうだ。BSE牛4500頭につき変異型クロイツフェルト・ヤコブ病1人なら、その逆に、孤発性クロイツフェルト・ヤコブ病患者の死体4500体につきBSE牛1頭だと仮定できなくはない。これは確かになかなかありえない話だ。だがひょっとしてもし1頭でも種の壁を乗り越えてBSEに感染したら、そこから共食いが繰り返され瞬く間に蔓延するだろう。そのひょっとしての1頭が有った場合のことである。人間は共食いをしない。変異型クロイツフェルト・ヤコブ病が1人発症してもそれが蔓延することは絶対にありえない。
BSE問題の補足
しばらくオリンピックモードかな、と思っていたら、いまいち盛り上がらないので、また通常モードに戻ってきた。

牛肉問題の整理も含めて補足的なことをいくつか。

◎クロイツフェルト・ヤコブ病について
脳に異常プリオン蛋白が蓄積して脳がスポンジ状になる病気をプリオン病と総称するが、そのうち人間が罹る病気のこと。進行性痴呆、運動失調等を呈し、発症から1年~2年で全身衰弱・呼吸不全・肺炎などで死亡する。孤発性クロイツフェルト・ヤコブ病と変異型クロイツフェルト・ヤコブ病の2種類がある。
まず孤発性クロイツフェルト・ヤコブ病はその名の通り原因不明で突如発症する。他からの感染ではなく、発症年齢は平均63歳で男女差なし。世界中に広く分布しており、日本では人口100万人に年間1人前後の率で発症する。つまりめったに罹らない病気だが、日本で実際年間100人~120人必ず発症し、1年以内に必ず死亡している致死率100%の病気だ。誤解のないように何度も言うが、牛のBSEとは何の関係もなく昔からある病気である。

これに対して変異型クロイツフェルト・ヤコブ病は、牛のBSE(牛海綿状脳症)から感染したものを言う。発症数は完全には調べられなかったがおそらく全世界で200人ぐらいだろう。牛の飼料が改善されているのでおそらく収束に向かうはずだ。ちなみにアメリカではイギリス滞在者を除くと発症した人はいない。この変異型の症状は孤発性と同じだが、進行が幾分緩慢で発症から平均18ヶ月で死亡する。あと若年で発症し、生前でも脳波検査で孤発性との差異がはっきり認められるが、死後、解剖によって、脳が海綿状(スポンジ状)になった病理所見を確認して孤発性か変異型かの確定診断が行われる。つまり孤発性か変異型かは、はっきり判るわけである。

◎共食いによる蔓延
プリオン病には人、牛の他に、羊のスクレイピー、伝染性ミンク脳症、鹿の慢性消耗病(CWD)などがある。BSEはスクレイピーに罹った羊の肉を牛に食べさせたことから起こったのではないか、という説があるが定かではない。

あと人には、パプアニューギニアの高地に住むフォレ族にクールー病というクロイツフェルト・ヤコブ病と全く変わらない症状の病気がある。とくに女性と子供に多く、フォレ族には人食いの風習がある。この種族は成人男性だけが動物を食べていたため、女性や子供はタンパク質不足に陥っていた。これを解消するため、死んだ親族を埋めずに食べる儀式が彼らの間に広まっていた、ということだ。原因は完全には究明できていないが、おそらくたまたま発生した孤発性クロイツフェルト・ヤコブ病患者の脳などを食べることにより、感染して広まったのではないかと容易に想像がつく。世界で人食いの風習があるのはおそらくここだけではないはずで、フォレ族にはたまたま孤発性クロイツフェルト・ヤコブ病患者がいて、他の部族にはそれがいなかったから、そのような病気が広まらなかったのではないだろうか。
BSEも明らかに共食いが原因である。これは牛のほうが人間の効率主義から無理矢理させられているだけだが。
鹿の場合は原因を今究明中とのことだが、鹿狩猟産業が盛んなアメリカがほとんどということだ。アメリカでは鹿農場がたくさんあり、やはり効率的に鹿を成育させているだろうから、BSEと同根だと考えられる。一方、イギリスにもアメリカと同じく鹿狩猟産業が盛んで、鹿農場がたくさんあるのだが、慢性消耗病(CWD)の発症がゼロとのことだ。これは興味深いデータである。BSEがイギリスで話題になる前なら、イギリスの鹿農場ではBSEに罹った牛の骨粉を鹿のための飼料に混ぜていた可能性が高い。それは鹿の数より牛の数のほうが圧倒的に多いため牛骨粉はかなり余り、安価だと思えるからだ。なのに発症がゼロで、アメリカではかなり深刻な社会問題になるほど蔓延しているのである。アメリカでもイギリスでもおそらく鹿農場では同じような飼料を与えていて、牛骨粉のほかにも、食肉に供されなかった鹿の脳などのいわゆる危険部位を鹿の飼料に混ぜていたに違いない。つまり鹿の共食いだ。なのにアメリカだけに発生した。想像するにおそらくこれもクールー病と同じで、アメリカの鹿にはたまたま孤発性の慢性消耗病(CWD)の鹿が発生していて、イギリスの鹿にはたまたまそれが発生していなかったのではないか。そしてイギリスで発生しなかったということは、牛と鹿との種の壁は相当に高いことが想像される。

つまり共食いがあるから発症するわけではなく、最初は孤発性がたまたま発生して、それの共食いで蔓延していくのではないだろうか。だから牛のBSEの場合もたまたまイギリスの牛に孤発性が発症して無理矢理共食いをさせることにより蔓延していって、他国の牛にはたまたま孤発性が発生しなかっただけではないだろうか。
(他国、特にフランスなどのイギリス周辺国にBSEの発症例が多数報告があるが、これらはすべてイギリスからの輸入飼料によるとみなされている。)

おそらく孤発性のプリオン病というのは人間も含めて結構起こる病気なのではないだろうか。そしてそこで共食いが起こると蔓延しやすい。しかしこの種の病気は種の壁は結構高い。でも越えることはある。伝染性ミンク脳症は羊のスクレイピーから感染したという研究報告があるし、イギリスのBSEも同じく羊のスクレイピーから感染した可能性は確かに高い。そしてもちろん変異型クロイツフェルト・ヤコブ病は牛から種の壁を越えて人間にやってきた病気だ。しかし羊から人へは絶対に感染しないということがはっきり実証されている。これは18世紀にヨーロッパで羊のスクレイピーが大流行したときに人間には全く影響がなかったからだ。
種の壁は越えることもあれば越えないこともある。たとえ越えても共食いによって感染することに比べれば、かなり発症確率は低いことがどのデータからもわかる。

前エントリーで日本人が神経質すぎると非難したが、考えようによっては「共食いという禁忌」に対する無意識の霊感のようなものが働いているのかもしれない。確かに共食いによるプリオン病の蔓延ほど、この世におぞましいものはないだろう。これはひょっとしたら共食いをさせないために、自然が予めプログラミングした病気なのだろうか。
日本人はウルサイ
 日本人はウルサイ。
 食品衛生に関しては特にウルサイ。
 もしその食品に虫一匹でも混入していたら、上を下への大騒ぎである。何人かの関係者の首が飛び、何社かは倒産に追い込まれかねない。別にその虫を生で食べたとしても、おそらく腹一つくださないだろうし、火を通していれば立派な蛋白源なのにだ。単に気色が悪いだけのことで、純粋に精神的な話でしかない。フィジカルな話はほとんど何一つない世界である。だから慰謝料程度で済む話でしかないはずだ。だがそんな話に我々日本人は最近特に右往左往させられることが多い。今度のBSE問題もそんな傾向の話ではないのかと、訝しく思っている。

 牛のBSE、そしてそれが人体に入って発症する変異型クロイツフェルト・ヤコブ病はまだ未解明な部分が確かに多い。以下僕がこの病気について書くことは、集めた資料やデータからの僕の直感であることを予めお断りする。

 まずBSEはウイルスや細菌でうつるわけではない。感染した牛の異常プリオン蛋白質、つまり脳、脊髄などの危険部位を直接に、あるいはこれを含む飼料を牛に与えることによってその牛は経口感染する。そしてその牛の正常プリオンが異常プリオンへと変異する。それも約100頭に3頭が発症する程度だから蔓延しにくい病気なのだ。そして一番肝心なのは1回食べたからといって感染するわけではなく、継続的に食べていて初めて感染するらしいということだ。それに牛の群れの内部ではBSEは接触感染しないし、動物個体間で広がることもない。垂直感染のように感染した牛から生まれた子牛が感染するということも今のところ報告されていない。ちなみにアメリカでは57000頭を検査し、1頭が陽性であったという。

 じゃ、人間へはどうか。 ちなみにBSEは牛の病気であって、人間の病気ではない。
 BSEに罹った牛の危険部位を継続的に食する習慣があると、その人間は変異型クロイツフェルト・ヤコブ病に罹る恐れが確かにある。これを我々は非常に恐れている。なせならその症状が激烈だからだ。だがその発症確率は極めて低い。英国でこれまで約100万頭の牛にBSEが発生しているなかで、人への感染例はたった150人余りである。まず種の壁があり牛に感染するよりもっと感染しにくい。それに感染者の多くは危険部位を日常的に食する習慣があったと聞く。この数字だけでも、普通に牛肉を食べるだけではまずこの病気はうつらないな、と確信できる。 おそらく感染した牛であっても、その危険部位ではない肉なら食べても大丈夫だろう。

 英国でのあの時の大騒ぎのお陰でと言おうか、今世界的に見て、飼料もまだ完全とはいえないだろうがかなり改善が見られ、BSEという牛の病気は終息する方向である。人間がうつる変異型クロイツフェルト・ヤコブ病にいたっては英国以外に限ると、今ではもうほとんど世界的にも発症例がないらしい。つまりこの病気はもう終るはずだ。何度も言うがウイルスや細菌でうつる病気とは根本的に違うからだ。アメリカの牛で怖いのはむしろO‐157のほうである。アメリカのファームの衛生状態はかなりひどいらしい。ひどいからと言ってBSEとはあまり関係ない。BSEは飼料に何を食べさせるか、この一点のみにかかっている。この病気は他の感染病に較べて簡単に無くせる病気に違いない。だからアメリカ産牛肉をレアで食べると、O‐157がどうだろうか、という問題のほうがよほど深刻なのではないだろうか。実際アメリカでは最近でもこのO‐157による死者は跡を絶たない。生焼けのハンバーガーが特に危ない、という噂もある。ただO‐157に関してはちゃんと火を通せば絶対に大丈夫である。BSEは火を通しても全く効果は無くうつるときはうつる。だから恐れられているのだろうが、どうも日本ではウィルス感染かなんかと勘違いされているのでは、と僕には思えて仕方ない。

 それにBSEをすでに発症してしまった牛の危険部位のみが危険なだけである。潜伏期間中の牛は大丈夫と報告がある。潜伏期間は平均4~5年である。普通肉牛は3才までに肉にされる。なのにアメリカには念には念を入れて生後20ヶ月以下の牛に限ると約束させた。だから思うに生後20ヶ月以下であればその危険部位とやらを食べても大丈夫と僕は確信する。なんなら僕がその問題の、危険部位を食べてもいい。百歩ゆずって生後20ヶ月以下で危険部位を取り除いた牛肉であれば全頭検査は絶対いらない。全くの無駄である。

 ま、とにかく今度こそはアメリカも日本人の異様なまでの神経質さには恐れ入っただろうから、これからはちゃんと生後20ヶ月以下で危険部位を取り除いた牛肉のみを輸出するだろう。日本人全体がリスクパラノイアに罹っているのだという認識が必要なことをやっと理解したに違いない。

 しかしこの問題をめぐる政府の対応も後手後手で情けなかったが、それを攻める側もそれ以上に情けなかった。なんと臆病で神経質な民族なのだろう、我々日本人は。そしてなんと無知なことか。