スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
--/--/--(--) --:--:--| スポンサー広告| トラックバック(-) コメント(-)
俳句韻律の可能性
僕は俳句時代、永田耕衣が主宰する『琴座』(りらざ、と読む)に二年いて、それが終刊になったあと、同じく『琴座』だった花森こまさんの『逸』に参加し、そのあと、攝津幸彦の同人誌『豈』の関西支部句会に堀本吟さんを頼って参加した。この句会が川柳作家を巻き込んで『北の句会』として新たに立ち上がり、第1回から参加させてもらったわけだが、短歌に転向してからはもう俳句の会はどこにも出ていない、というか俳句を全く作らなくなった。

で、永田耕衣、攝津幸彦など、僕に言わせば、どろどろ系に僕は居たわけだが、実際は何を隠そう外見に反して、長谷川櫂、阿部完市、四ッ谷龍などのさわやか系が好きだったのだ。周りに同志が少なかったのであまり声を大にして言わなかったが。もっとも永田耕衣、攝津幸彦は僕の好みなど軽がると超えてくる。それぐらいの圧倒的な魅力ではあった。でも実際のところ抒情の質から言うとそんなに好きではなかったのだ。なにも俳句仲間には隠していたわけではないですが、あまり言う機会がなかっただけだと思う。なんせ攝津幸彦は僕の周りでは絶対だった。まさに神のような存在だったのだから。僕も最初に俳句をやりだしたきっかけはやはり攝津だった。これはどうしようもない魔力のようなものだろう。

と、まぁ、俳句のことを書き出すとなんぼでもあって長くなるが、『未来』から俳句に関する文章を書いてください、という依頼があり、以下の文章を書かせてもらった。
俳句の韻律の可能性みたいなことについてである。が、別に可能性についてはなんにも論じてはいない。要は阿部完市、四ッ谷龍が最高、ということを、今まで声を大にして言えなかったことを書いただけである。だからちょっとスッとしました。


俳句韻律の可能性   細見晴一    (『未来』11月号より)

三十代後半の頃、様々な現代俳句を読み、そして自分でも少し俳句を作った。永田耕衣、攝津幸彦、金子兜太、高柳重信、長谷川櫂、夏石番矢などの主に前衛俳句に夢中になり、いわゆる俳句フリークだったと言える。しかしなかでも、その抒情の質の点において、そして韻律面において、最も僕を虜にしたのは阿部完市と四ッ谷龍の二人だった。

    ・阿部完市
    絵本もやしてどんどんこちら明るくする
    栃木にいろいろ雨のたましいもいたり
    木にのぼりあざやかあざやかアフリカなど
    淡路島と色彩学とはるかなり
    君よぼかんぼかんと牡丹大花こわす君
    きらきらしきらきらしきさらぎの碁打ち
    みてやれば水素記号のようなり舟の子
    たすけてほしいのです洋梨くるりくるり
    綿畑わたはなすらすらととどけられたる

社会性思想性を帯びた難渋な前衛俳句を通り抜けてきたあとの、開放感のある乾いた明るい抒情。俳句の世界では「あべかん」の俳句は難解すぎるとよく非難されたが、意味を解そうとするから難解なのであって、僕は言葉を素材とした音楽として楽しんでいた。つまり俳句という名の音楽なのだ。五七五定型から微妙に絶妙にはずされたこれら韻律に、ほとんど記号と化した言葉がリズム良く乗り、記号と俳句韻律による音楽が奏でられる。聴く側(読む側)はそれにうっとりと身を任せるだけでよい。

    ・四ッ谷龍
    シーツみたいな海だな鳥たちは死んでしまった
    明るい三角の部屋で君の背中がパリ
    むこうがわに人間もいてものものしきブギウギ
    菩薩を感じつつだぶだぶのズボンで走る
    土俵の直径についてバラを見ながら言う
    ゆがんだ頭のような山ありビデオに撮る

四ッ谷龍はその俳句のほとんどを五七五定型で作るのだが、主に若い時の句にこういった自由律の句が多く見られる。有季定型俳句の高浜虚子と袂を分かった河東碧梧桐の弟子、中塚一碧楼の影響を強く受けたらしい。このように口語自由律俳句が細々とではあるが、現代の口語を反映したスピード感のある韻律で受け継がれているのである。
昭和三十三年生まれの四ッ谷は、現代的なモチーフで現代的な俳句韻律をものにした稀有の俳人ではないだろうか。短歌においては、この四ッ谷と同年代の加藤治郎と、僕の中ではだぶってくる部分が多い。
僕は俳句時代、この四ッ谷の影響を強く受け、自分でも口語自由律俳句を作っていたのだが、それがどうにもしんどかった。俳句と短歌のちょうど間ぐらいの長さで韻律が落ち着かないのだ。それで苦し紛れに短歌に行き、韻律が落ち着いて開放されたわけである。だが破調や自由律の面白さが病みつきになっているので、短歌に行ってもしばらくはこの方向を止めないだろうと思う。

スポンサーサイト
コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。