日本の難点④いじめ問題
宮台真司は上から目線だから嫌だ、と言う人がいるらしいが、社会学者なのだから上から目線で当たり前である。上から目線だからこそ見えてくることもあるわけで。

今回は、いじめ問題。かなりいいことを言っていると思った。

最初に確認しておくと、「いじめ」とは、単に誰かを嫌うことや、嫌うがゆえに悪口を言ったり、嫌がらせをすることとは違います。その程度のことであれば、誰でもどこでも、常に既に、やっています。だから、逆に、それを理由に「いじめ」はなくならないと言うのも、誤りです。
「いじめ」は人の「自由」な日常的活動のベースになっている「尊厳」(他者の承認を契機とする自己価値)を、回復不能なまでに傷つけることで、以前と同じ生活を送れないようにしてしまうことです。「尊厳」を破壊することで「自由」を奪う営みこそが、「いじめ」の正確な定義です。


ここまで明確な「いじめ」の定義をはじめて見た。これに対して何も付け加えることはない。そしてこう続ける。

このように定義され直した「いじめ」であれば、完全になくすことは現実的に無理でも、相当程度なくすことができるはずです。言い換えれば“「いじめ」はなくならない”ではなく、“「いじめ」はほとんどなくすことができる”という物言いのリアリティこそが、真実を言い当てています。


感動してしまう。あきらめるのではなく、別に根絶しようとがんばるのでもなく、相当程度なくすよう前向きになる、ということ。では実際どうすれば、その、相当程度なくすことができるのか。

宮台が言うには、人が本気で話したことは本気で聞く、という環境でないとだめだ、ということ。つまり今はそういう環境になく、特定の相手にコミットしてバカを見るより、相手を取り替えたほうが低コストになる環境。あとは宮台の言うことをそのまま書き写したほうがわかりやすいので、そのまま書く。

 つまり昔は「本気」で聞かなければ生きていけなかったのが、「本気」で聞かなくてよくなりました。「本気」で聞かなくてよくなったということは、「本気」で聞いてくれる人がいなくなるということですから、「本気」で喋るのもバカバカしくなります。あとは単なる悪循環です。
 そんな悪循環の中で「場」への適応だけが肥大します。この「場」では、昔と違って、誰も「本気」で話したり「本気」で聞いたりすることがない。そんな「場」で「仲間と同じでなくちゃいけない」という同調圧力に対処しなければいけない。昔の共同体にはなかった課題です。
 それでも他に「場」がなければ、この課題は優先されざるを得ません。そうした課題が優先されれば、他者の「尊厳」を回復不能に損壊することも「あり」になってしまいます。ここに度を越した「いじめ」が蔓延してしまう社会環境があります。社会環境への適応が「いじめ」をもたらす以上、環境をいじるしかありません。


最後のところが少しわかりにくいかもしれないので付け加えると、周囲に同調しなければならないということが優先される環境においては、他者の「尊厳」を回復不能に損壊することよりも、自身の周囲への同調のほうが優先されてしまう、ということになり、自然と「いじめ」が発生する、ということ。

思い返せば、僕自身が相手を話せる相手かどうか、ということを無意識に識別していたポイントは、この、こちらが本気で話してよいのかどうか、相手も本気で話すかどうか、ということにあったのだ。相手が本気で話さない限り、こちらも本気で話すことは絶対にできない。これは経験上ものすごくわかる。その点、俳句短歌詩人仲間の人たちはほとんどが本気で話すことが大前提となっている。だから僕もそこに参加していこうと無意識に思うわけで。これには実は気がついているようで気がついていなかったのかも。相手が本気でさえあれば、意見の食い違いなどたいしたことではないのだ。

で、最後宮台は、その問題とするいまの環境をどういじればよいのか、というところで、「政治体制のシフトが必要になる」ということ、つまり、僕が日本の難点②のところで書いた、アメリカへの負い目から自由になって、日本が軍事化するということ、これが必要なんだと言っている。最後で愕然とさせられます。でもここら辺は目をつぶって、今のところ、この人についていきます。だってこの人、面白いもの。
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コメント
この記事へのコメント
『本気』ってどんな気ですか?どうすれば『本気』か『嘘気』か分かりますか?
2009/06/23(火) 04:14:55 | URL | ryu #-[ 編集]
『本気』って、結局、その場を笑いなどで盛り上げなくても、しらけさせても、言える勇気のことでしょうか。やっぱりその座の雰囲気を重視するでしょうから。言い換えれば、あえて空気を読まずにどこまで言えるか、ということでしょうか。

逆に言えば、その場を盛り上げることばかり考えているのが、『嘘気』になるでしょうか。

宮台的にいえば、同調圧力に抗ってでも言えることが『本気』であり、抗えないことが『嘘気』でしょうか。相手にもよりけりでしょうけど。
2009/06/24(水) 22:07:28 | URL | hosomi #4DppGirI[ 編集]
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