村上ファンド(その2)
 今の社会、村上ファンドと阪神電鉄、楽天とTBS、あるいはちょっと前のホリエモンとニッポン放送との話も含めて、こういった話が喧しいが、みんな一緒くたになっていて、金で何でも買い占めるのか、という話になりがちだ。だが一応区別しておかなければならないことがある。
 楽天とライブドアは一応実業である。IT産業は虚業じゃないか、とおっしゃる向きもあるだろうが、インターネットという今や社会に完全に認知された業界で、ただあっという間にのし上がったというだけのことで、彼らが起こし彼らが整備したこの産業はしっかりとこの社会に根付いてしまっている。今やこのインターネット抜きにこの社会は存在できないほどに浸透してしまっている。だから彼らは純粋に業務提携を呼びかける。それは一応その企業を長く持ちたいからに他ならないだろう。もちろん吸収していしまいたい野望は間違いなくあるが。しかしそれもその企業を長く持つ、ということに他ならない。
 一方、村上ファンドのような投資会社はどうだろう。かなり成長著しいが、本当にこの社会が必要としている業界だろうか。彼らは資金を調達して、他人のお金を株などに投資し、利ざやを稼いで投資者に還元する。それが仕事だ。ただ一般のトレーダーや投資会社と違って、狙いを定めてその会社の株を買い占め、発言権を勝ち得て、自分が買い占めた株にもっと価値が付くようにその会社に対していろいろと業務改善なりを進言して言うとおりにさせ、高値で売りぬく、というこういった業種としては先進的でハイレベルなことをやっているのだろう。だが本来はそんなことをしなくても社会は成り立つし成り立たなければいけない。いわばこの社会のハイエナである。自分で獲物は仕留めない。つまり何も生産しないしサービスもしない。他人の仕事の成果の余剰部分をちゃっかり拝借する。それも村上ファンドに到っては、他人の仕事のやり方にいちゃもんまで付け、もっと成果が上がるように命令して、もっと自分の取り分である余剰部分を増やそうとしている。アグレッシブなハイエナである。謂わばハイエナがライオンに獲物の仕留め方を指導しているようなものだ。だがどこまで行ってもハイエナはハイエナでしかない。もちろんその会社を長くもつつもりも毛頭ない。つまり彼らファンド会社は虚業以外の何者でもない、と言い切っても誰も依存はないだろう。
 だが資本主義はグローバル化している。これからもどんどんグローバル化するだろう。そんな中で、日本の中でだけでのほほんと日本式資本主義を謳歌していても、いつまでも持たないのはもう目に見えてきている。阪神タイガースを自分の温室の中だけでじっくりと育てて大きくするということも、もうこれからはできないのかもしれない。外気に当てて強く成長させ、来るべき外資系のファンド会社、ひょっとしたらもっとたちが悪くしかももっと大きなハイエナどもの来襲に備えさせようと、村上氏は今、この日本社会に食らい付いたのかもしれない。いいように解釈すればそういうことで、もし彼らファンド会社の存在意義があるとすれば、そこだけである。それ以外には全くない。言い切れる。

 これからの資本主義社会はこういったハイエナどもから如何に身を守るか、ということに相当神経を注がないと、この社会そのものがハイエナどもに食い尽くされてしまうのかもしれない。この当たり前と思っている今の資本主義社会は全くもって不完全で、隙間だらけに違いないからだ。
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コメント
この記事へのコメント
村上ファンドについて
はじめまして、通りすがりのものです。村上ファンドと検索してたどりつきました。

なかなか手厳しい意見をおっしゃられていますが、決してファンドは悪いものではないと思います。

というのも、村上氏のようなファンドは積極的に経営に意見し、それにより株価の上昇を狙っていることは確かなことです。しかもそんなことをしなくても社会は成り立っていくであろうことはあなたの推察するとおりでしょう。

ですが、より効率的な資源配分ということを考えれば、彼らのやっていることは必要だと思います。

そもそも株式は資金調達のために企業が発行するものであり、株式の流通市場を通じて価格がつけられます。

しかし、経営陣が怠慢であったり、TBSのように豊富な資産(都内の一等地など)をもちながらも、それを有効に活用していないことが問題なのです。

つまり株価を上げろと要求するのは、資産の有効利用や経営の効率化を要求しているのと同じことです。例えば今回のような一等地を何か他の事業に用いたり、その土地を必要としている企業に貸したりすることで、TBSは賃料を、借りた企業はなんらかの営業活動が可能になります。
その結果は、ただ土地を持っているだけのときより明らかに雇用は増加し、経済効果も波及します。

このような試みがもっと活発になれば、日本経済全体にとって必ずプラスに働きます。

私は、不景気に不満を言いつつ、このような試みにも反対する人たちは
矛盾していることを主張しているように思えます。

国民全員が理解するべきだなどとは決して思いませんが、感情的に批判しても何も解決しない問題であることは確かなので、よく考えていただきたいと思います。
2005/10/18(火) 10:37:40 | URL | John #MF8IyTP2[ 編集]
長期的視野で
Johnさん、真摯なコメントをありがとうございます。

一つだけあなたは勘違いされていることがあります。企業というものはそれが大企業であればあるほど、その社会的責任は大きく、したがって、常に長期的視野に立って経営をしないとだめなわけです。
ファンド会社の言うとおりにすれば、確かに短期的にはその企業は業績を上げ、あなたの言うところの経済効果もあるでしょう。しかし長期的には彼らは全く考えていません。もし考えていたらそれこそ投資者からクレームがつくでしょうから。投資者たちは、今どれだけリターンがあるかその一点にしか興味がいかないからです。将来儲かっても全く意味を成さないからです。
だから短期的にしか考えられない彼らファンド屋はほとんど無用な人種だと言ってかまわないわけです。

 そしてどれだけ多くの企業がどれだけ長期的な視野に立てるか、そのことのみがその国の本当の経済力にかかっていると言っても過言ではないでしょう。短期的な視野にしか立てない中国経済などは今は良くても、将来的にはかなり危ないでしょうから。

経済のことがそんなに一筋縄でいかないのは、僕のような経済の素人より、あなたのような玄人の方のほうがよくご存知のはずなのですが。
2005/10/18(火) 23:13:59 | URL | hosomi #4DppGirI[ 編集]
なるほど、企業は長期的視野に立たねばならないということは当然です。

しかしながら、まずはじめに考えなければいけないことはファンドが全てそうかということです。ファンドといってもさまざまですが、中期的視野にたって投資するファンドも当然あります。その意味では全てのものが悪といった認識は違うかと思います。ご存知だとは思いますが、上場企業の場合、年金の運用はたいてい投資ファンドに委託していると思います。

第二に、短期的な利益がなぜ長期的な利益と結びつかないといえるのでしょうか。彼らのやろうとしていることはまず経営の改善であり、効率化です。たとえ短期で売ったとしても、経営が改善されれば決して悪いことには思えません。

また、適正に評価されていない企業の株価を適正な水準にするということもファンドの大きな役割です。社会的に見て個々の企業のファンダメンタルズと乖離した株価は非効率的です。経済学をかじっていれば分かりますが、本来ならば市場を通じて適切な価格に均衡するべきなのですが、全ての市場参加者に正しい情報が伝わらないことは現実の経済では多々あります。彼らはそれを適正な水準になるまで買うということです。それにより株式市場を通じて最も効率的な資源配分が達成されるわけです。長期的な視野に立つには効率的な資源配分は必要不可欠でしょう。

庶民感覚を離れた金額を動かす人たちは、日本ではやはりあまりよく思われないようで残念です。自分たちも年金という形でファンドの恩恵を受けているわけですし、頭から否定することはやはり違うように思います。心のそこから否定するならば、資本主義国で生活するべきではないのではと思います。
2005/10/19(水) 08:47:44 | URL | John #MF8IyTP2[ 編集]
効率と余裕
いろいろとご意見ありがとうございます。

まず僕は投資ファンドそのものを否定いるわけではありません。ファンド屋を否定しているのです。(僕自身も野村と大和で投資信託をやっているくらいですから。もっとも大損しましたけれど。)

短期的な利益と長期的な利益についてですが、これは様々なケースがあり一概には言えないと思います。Johnさんの言われるようなケースもあるでしょう。しかしたとえば今問題になっている、阪神タイガースの株式上場などは、短期的には相当な利益を各方面にもたらすことは間違いないでしょうけれど、長期的に考えれば、どうでしょう。ここでファンの夢が壊れる、とか経済と関係のないことを言うつもりはないですが、良いこと悪いこと様々なことが予測されます。

あと〈効率的な資源配分〉ですが、これがどうも僕にとってはいやーなものなのです。話は飛びますが、池澤夏樹のエッセー集『楽しい終末』に資本主義のことがあり、常にプラス成長を強制される資本主義社会とは巨大なねずみ講と同じではないか、と書かれてありました。つまりこのまま行けばいずれ資本主義そのものが行き詰まり破綻するわけです。永遠にプラス成長することはありえませんから。池澤の言うことがたとえ妄言だとしても、このまま効率重視で成長のみを追いかければ早晩近い状況になるのではないか、と最近思えてなりません。
おそらく今我々が資本主義について考えるとき、効率重視の議論ではなく、逆にもっと緩やかな資本主義のことを考えないと、もう本当に近い将来何がしかのことが起こるかもしれないのです。その前兆が今度の村上ファンドのような気がしてなりません。気のせいならほっとするのですが。

たとえば都心の一等地に遊んでいる土地が少々あったほうがなんだか余裕があっていいと思うのですが。これは僕の全くの直感でしかありませんが、時間的空間的にぎゅうぎゅうに詰まっているより、少しでも余裕があるほうが、経済的に見ても結局はいいのではないでしょうか。

以上、経済学などまともには一度も勉強したことのない、ど素人の意見ですが、経済というのはもっと広い視野で考えなければと常々思っているしだいです。もっともその前にプロの経済学者の意見をちゃんと理解しないとだめでしょうけれど。
その意味で、Johnさんにいろいろと教えていただき、ありがたいと思っています。
経済学は難しいですね。様々なことを視野に納めて俯瞰しながらも、細部も見つめれないとだめでしょうから。
2005/10/19(水) 20:54:41 | URL | hosomi #4DppGirI[ 編集]
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2005/10/15(土) 12:03:46 | Hotta World:: 「活・喝・勝」