文学が呻いている
気になるコラムがあったのだが、なかなかそれについて書く時間がなかった。やっと何とか書こうと思う。12月1日付産経新聞夕刊、秦恒平氏の「文学が呻(うめ)いている」。後半をそのまま抜粋する。

 平成の今日只今、文壇は文字通り「無残」であるが、これをさらに徹底破壊しつつあるのは、もう新文学青年達の思想や生活態度であるというよりも、時代と社会基盤(インフラ)の変化であり、変化の芯に仁王立ちした「コンピューター=電子メディア」という大魔神であろう。
今日「読みたい人」は減る一方、「書きたい人」は増える一方、と言われている。ホームページ。ブログ。とても「創作=creation」といえない低度・小規模の「製作・生産=production」であり、ほとんど全部が「商品」にも「文藝」にもほど遠い。通用しない。しかし「書かれ書かれ書かれ」ていて、当然ながら9割9分9厘「読まれていない」。
 驚くことにこの状況を、はるか戦前の昭和6年、批評家の杉山平助は、かなり正確に予見していた。少なくとも「文学の生産者と需要者の関係が、利潤にケーア(関心)を持つ仲買人の手を通じてではなく、より合理的な新しい社会機関(パソコン・携帯)を通じて結びあはされ」得る時代「だけ」は、現に今日実現している。
 だが現状、作者と読者はそこで質実に「結びあはされ」ていない。皆が「書き手=作者」へと殺到している。読者を見失った文学がいま呻いている。


とまぁこんなところだが、身につまされる。僕も含めてみんなが書き出したのだ。ブログの登場で、文学の生産者と需要者のバランスの取れた関係が完全に崩れてしまい、皆が「書き手」へと殺到している。実際僕自身ブログを始めてから恐ろしいほど他人の文章を読まなくなった。自分と関係している人の文章ぐらいがやっとだ。知り合いに小説家はいないので、ここ半年ほど小説の類は全く読んでいない。じゃ、何を読んでいるのか。ブログである。自分のブログのネタに関係してくる文章しか読まないのだ。そんな閉じた状況で僕は文学なんぞをやっていると言えるのだろうか。
まぁでも僕自身はいい。僕の文学仲間は意外にこのブログを読んでいてくれて、実にありがたい。感謝感謝である。だが文学全体にしてみれば、本当にいい文学がどれだけ読まれるのだろうか、残っていくのだろうか、という極めて重要な問題が生じてくる。皆が書いて書いて書いて、読まなくなったら、その書かれたものはいったい何のために存在しているのだろう。うすら寒い文学の未来である。
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コメント
この記事へのコメント
ふとアネクドートを思い出しました。
>皆が書いて書いて書いて、読まなくなったら、その書かれたものはいったい何のために存在しているのだろう。
こんちわ!この文章で、ふとソ連時代のアネクドートを思い出しました。西側の要人がソ連に来た時、出迎えの民衆がいないことに気付いたその客人『あんたが嫌がらせで皆の外出を禁止したのか?!』と、ホストのブレジネフ書記長を問いただす。
書記長「とんでもない、そんなこたア、スターリンにもできなかった。実はソルジェニーツィンを、何でもかんでも書くから国外追放したら、皆真似して書くようになった。」

書くことが現実逃避にならないことが確かに大事ですよね。

和歌の会のレポートも読ませていただきました、秦の始皇帝と欧州が羨ましいという文章も。少しベタなところと鋭い修辞とがごっちゃで凄く好きです。
2006/01/12(木) 23:48:08 | URL | 建つ三介 #-[ 編集]
少しベタです
>少しベタなところと鋭い修辞とがごっちゃで凄く好きです。
ありがとうございます。確かに少しベタです。TVドラマ「1リットルの涙」を見てちゃんと泣くやつですから。でも鋭い修辞なんかあんまり記憶にないのですが。

>和歌の会のレポートも読ませていただきました
ありがとうございます。でも一応、和歌ではなく短歌ですので。僕自身は和歌には興味ないのです。この二つの違いを実は僕自身あまり知らないのですが、おそらく昔の古今集や万葉集を和歌と呼ぶのでしょうね。僕はこれまた無教養ですので、この和歌の世界はほとんど知らないのです。今の表現しか興味ないものですから。
2006/01/13(金) 00:40:17 | URL | hosomi #4DppGirI[ 編集]
>でも鋭い修辞なんかあんまり記憶にないのですが。
でも
風が風の尾を噛む夜更けやり過ごす鬼の貌なる複合体よ
ましぐらに雑木を抜ける黒白(こくびゃく)のつがいの鳥の横貌けわし
の読み解きなんて、かっこいい じゃないですか。
2006/01/13(金) 18:31:06 | URL | 建つ三介 #-[ 編集]
あれは山下さんの短歌がかっこいいのだと思います。
2006/01/13(金) 22:41:41 | URL | hosomi #4DppGirI[ 編集]
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