木を見て森を見ようとしないメディア
従軍慰安婦に関する吉田証言は誤りでした、という朝日新聞の昔の誤報道に対する各メディアの朝日バッシングが凄まじい。今のところ止みそうにない。確かに朝日は嘘と気が付いていながらも引き下がれなくなったのか、あまりに引っ張りすぎたようだ。これは謝罪をして落とし前をつけてほしいけど、問題は朝日以外のメディアの方にある。

毎日新聞はどうも朝日と同じ穴のムジナとは思われたくないのか、冷静に距離をとった特集記事を今日掲載した。

毎日新聞「朝日「慰安婦報道・点検」をめぐって:吉田清治証言 国際社会に誤解広める 国連報告などが引用、朝日は影響に触れず」

これは置くとして、ひどいのは各週刊誌の広告だ。

社会科学者の随想「朝鮮人慰安婦問題も関東大震災虐殺も南京大虐殺もなかったと大合唱する右翼・国粋・保守・反動の新聞紙,雑誌など」

完全に朝日という一つのメディアを潰しに来てる。これでもかという品の無い言葉の羅列がまるで日本語の墓場のように延々と続く。

しかしこれら保守系、右派メディアや安倍、橋下に代表される保守系、右派政治家たちは、吉田証言という一本の木だけを見ていて、森を見ていない。いや見ようとしないのだ。済州島で慰安婦狩りがあったという、センセーショナルなだけの証言に飛びついたメディアの責任は確かに重いだろう。佐村河内事件の時もそうだったが、嘘までついてセンセーショナルな話題を提供しようとする輩はいつの時代もいるのだから。なぜなら金になるからだが。だからこそその証言の裏付けをきちんと取るというのはジャーナリズムの基本だろうと素人ながらも思ってしまう。

吉田証言という一本の木は確かに腐っていた。それを腐っていたのをうすうすわかっていながら、さも腐っていないかのような報道をした朝日の責任は重いだろう。

しかしだ。吉田証言という一本の腐った木の周りには大きな森があるのだ。従軍慰安婦という大きな森が。その森こそが重要なのであって。その森の中に腐った木はまだ何本かはあるかもしれない。しかし森自体は生き続けている。何千本何万本の木々が今も生き続けていて、未来永劫生き続けるだろう。

なのに彼ら保守系右派連中たちは一本の木が腐っていたのだからその森自体も無かった、とはっきりと断定してくるのだから。よくまあそんなことが、大の大人が言えるものだな、と不思議で仕方ないのだ。

今度の朝日のことでは、済州島で慰安婦狩りは無かった、ということがはっきりしただけのことだ。だが実際はおそらく、慰安所を仕切っていた日本帝国陸軍は慰安婦の安定供給を図るため、日本人だけでは間に合わず、諸外国の少女たちにも目をつけて、朝鮮半島では朝鮮人の業者に募集を任せた。任せられた業者はとにかく一人頭何円とかになるのだから、何とかして集めてくる。普通に商売なのだから。まずは普通に募集して。あまり集まらなかったのだろう、従軍として看護婦の仕事があるとか兵隊さんの賄いの仕事だとか言って連れていっただけのことだと思う。つまり広義の強制性だ。そして行ってみたら兵隊さんのSEXの相手を無理矢理させられ、それも延々と一日何十人ものSEXの相手ばかりさせられた、ということで性奴隷とか言われ、女性の人権問題として、普遍的な問題として今世界で問題になっているのだ。そういった証言は枚挙にいとまがない。これを全部腐った木と言うのだろうか。あるいは腐った木でないと納得できないのだろうか。

日本軍「慰安婦」―忘却への抵抗・未来の責任

朝鮮半島で募集したのが朝鮮人の業者だから、日本には何の責任もない、と大真面目に言う人もいる。だがその集めた慰安婦に無理矢理SEXさせたのは旧日本軍だし、SEXした男共もほとんどが日本人だ。それで日本に責任はない、というのなら、たとえば、どこかの暴力団の親分が、その敵対する相手を黙らしてこい、と手下どもに言って手下どもがヒットマンを雇い、そのヒットマンがカタをつけた場合、その親分には何の責任もないのだろうか。これと一緒だろう。あるいはオーム真理教で直接手を下していない麻原彰晃が無罪放免となるようなもんだろう。もちろん日本の法律はそんな野蛮な法律ではない。なのに今、反朝日メディアや政治家はこんな野蛮なことばかり言うのだから。週刊誌の見出しを見るだけで恥ずかしいというか、これは本当に日本なのか、と日本そのものに絶望しそうになる。

だがもっと重要なことは、この従軍慰安婦という森の周りにまだ巨大な森林があるという事実だ。それは日本の戦争責任という森林である。このことに関しては毎日新聞が非常に真摯な特集をしていてホッとしている。

毎日新聞「論点:戦後70年を前に/下 戦争責任に向き合う」

あの戦争は全部軍部がやったことで、一般の日本人こそが被害者だと教わった戦後教育をこそ見直さなければならないだろう。被害者は日本が攻めて行った、東アジア東南アジア諸国なのは当たり前なのだから。我々は加害者だったのだということ。ドイツではどの学年だか知らないがナチスを一年かけて教える。つまり我々ドイツ人には戦争責任があると教える。ドイツは加害者だったのだと。今ドイツが世界で欧州で何の違和感もなく受け入れられているのはこのせいだろう。それと同等なことを日本もやる必要があると思う。この戦争責任に対する鈍さこそがこれらナショナリズム諸問題の最大の原因かもしれないのだし。
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