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在日朝鮮人 歴史と現在 (岩波新書)
在日朝鮮人 歴史と現在 (岩波新書)

なんとなく知った気でいたつもりが何もわかっていなかったことを思い知らされる。これまで断片的に読んだり見聞きしたりしていた「点」が「線」につながる感じ。すっきりする。

明治以降の移民、戦時中の強制連行、戦後の占領軍と共産党との関係、南北朝鮮分断、帰国か日本人として生きるか、朝鮮人学校、日本人の謝罪意識とナショナリズムの台頭、パチンコ産業、ニューカマーによるコリアンタウン活性化、参政権、などなど。ただ、各団体や個人名など煩雑でわかりにくい面もあった。関係図などあったらもっとわかりやすかったが。

特に留意したのは、昭和19年より始まった、完全な強制徴用による朝鮮人の来日。日本人男性の多くが徴兵で戦地に赴く中、国内産業の空洞化を補う形で有無を言わせず朝鮮半島から100万人以上だろうか、炭鉱や工場など劣悪な強制労働に強制的に駆り出された。これからわかるように、当時の朝鮮人は日本人が困った時の補完要員として日本人がいいように考えていたいわば奴隷だったのだ。このノリから従軍慰安婦も日本人を慰安婦にするのは抵抗が激しかったから、その補完として朝鮮人に乗り換えた、ということがよくわかる。徴用と違って、仕事の内容から、完全な強制というわけにもいかず、従軍看護婦だとか兵隊さんの身の回りの世話だとか言って嘘をついて連れてったのだ。だから慰安婦問題だけでなく、当時の朝鮮人は日本人にとって当たり前のように奴隷扱いだったことを理解しなければいけない。当時の日本人はおそらくこのことになんの疑問も感じていなかったのだろうということも。こういった当時の人々の感情に根差した歴史認識が重要なのだ。

あと目から鱗だったのは、在日朝鮮人韓国人の中で、故郷への帰郷か日本へ帰化しての同化か、という二者択一的なものから、1980年代以降、日本に定住しつつも同化はせず朝鮮民族としてのアイデンティティは守る。つまり在日朝鮮人韓国人としての帰属、できれば在日〈統一コリアン〉としての帰属という第3の道を選ぶということ。そういう道を選ぶ人が多くなってきたということは新しい知見だった。
とにかく、日本人ももちろん多様化しているこの現代において、在日朝鮮人韓国人も価値観は多様化していることは間違いない。だから一律にくくらないことなのだろう。一人一人違ってて当たり前なのだ。

「どうせ国境なんかだれかの落書きだろう」とジニが言ったように、僕も落書きだと思うし、それぐらいでちょうどいいとは思う。だが困ったことに民族は頑固に存在する。思うに民族の違いとは背負ってる歴史の違いなのではないか。そのお互いの歴史を理解しあうということ。それがお互いの民族を理解しあうということに繋がる。そしてその上で「どうせ国境なんかだれかの落書きだろう」とつぶやいてみたい。
在日朝鮮人韓国人がそのための柔らかな接着剤のような存在になればいいと僕はこの本を読んで思った。
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