American Idiot
アメリカのメロディック・パンク・バンド「グリーン・デイ」に「American Idiot」という痛快な曲がある。直訳すれば「バカアメリカ人」。2004年に発表されたこの曲は、イラク戦争を起こしたブッシュ大統領、それを許したアメリカへの痛烈な批判が込められており、パンク精神に満ちた楽曲だ。

(ビデオ)

曲調は誰かのエピゴーネンかあるいは様々なエピゴーネンの集合体なのか、なんか聴いたことあるなぁ、という感じだが、あらゆる様式が出尽くしたこの現代において、エピゴーネンの集合体つまりエピゴーネン・コンプレックスこそが新しい様式を担うのかもしれない、なんてことも言ってみつつ、なかなか気持ちの良い曲には違いない。

歌詞は対訳があったので参考にした。(参照)

Don't wanna be an American idiot.     バカアメリカ人にはなりたくない
Don't want a nation under the new mania.  新しい狂気に支配された国なんていらない
And can you hear the sound of hysteria?  あのヒステリックな騒ぎが聞こえるか?
The subliminal mindfuck America.      アメリカを犯したあの潜在意識

(*1)
Welcome to a new kind of tension.    さあ新しい緊迫へようこそ
All across the alienation.         見渡す限りが孤立した状態で
Everything isn't meant to be okay.     OKなんて言えるような所は見当たらない
Television dreams of tomorrow.       テレビは明日を夢見てるけど
We're not the ones who're meant to follow.  そんなものに従ってどうする
For that's enough to argue.         それだけで、すでに疑わしいじやないか
(*1)

Well maybe I'm the faggot America.    ひょっとしたら俺が女々しいアメリカ人なのかも
I'm not a part of a redneck agenda.    (注)レッドネックと話は合わないし
Now everybody do the propaganda. どいつもこいつも「プロパガンダ!!」と・・・
And sing along in the age of paranoia. 猜疑心に支配された時代と一緒に歌ってる

(*1)をくりかえし

Don't wanna be an American idiot.     バカアメリカ人にはなりたくない
One nation controlled by the media.    メディアにコントロールされてる国なんて
Information age of hysteria.        情報化時代のヒステリーが
It's calling out to idiot America.      バカなアメリカで大声を上げる

(*1)をくりかえし

(注)レッドネック:アメリカ人が保守的で無学な白人を軽蔑する時に使う言葉。



世界中からアメリカが叩かれまくってたときに、アメリカの内側からもこうまで気持ちよく叩いてた奴がいたとは、恐れ入った。ビデオで特に後半、なぜか緑色の星条旗の横縞(このビデオでは国旗を垂らしてあるので縦縞だが)が脱色していってステージは緑色のインクで洪水になり、ついには星条旗は星だけになる。よく上映禁止にならないな、と思うほどの過激さである。しかもこの曲を含む同名のアルバム『American Idiot』は翌年のグラミー賞の「最優秀ロック・アルバム」を受賞している。日本で言えばレコード大賞の何かの部門だろうか。日本と比較するのはおかしいかもしれないが、まず日本では日章旗が脱色する映像自体が受け入れられないだろう。もっとも日章旗の場合はあの赤丸を脱色すれば全くの白地になるのでちょっとやり過ぎという面があり、星条旗の脱色とはまた意味が違うのだが。星条旗はまだ脱色というパフォーマンスが許されるデザインをしているから出来たという事情もあるにはある。それに国家の歴史がアメリカの場合は浅い、というのもあるが、しかし、この曲のグラミー賞受賞の事実から、アメリカという国の奥深さを思い知らされる。このことで逆にアメリカという国が不思議と信頼できる国のような気がしてくる。まぁなんでもありの国なんだろうけど、ある意味うらやましくもある。
比べて日本は卒業式の国家斉唱の際、起立を拒んだだけで教師が免職になるかもしれない、という息苦しさである。また日本のロックバンドがこういった社会詠をやったのを聞いたことがないし、あったとしてもそしてそれがどんなにヒットしたとしてもレコード大賞などの賞を受けることは絶対にないだろう。もしそうなっても政府からクレームが出るに違いない。少なくとも現東京都知事が絶対にだまっちゃいない。
また「レッドネック」という言葉があるのをはじめて知った。この言葉はどこの国にもいるあの無知蒙昧なナショナリストと同義だ。日本にはそんな言葉は見つからない。そりゃ、この国の首相と都知事が「レッドネック」なんだから仕方ないんだけどね、

とにかく健全な社会詠に拍手である。そしてこういった社会詠をゆったりと受け入れるアメリカという国にも拍手を送りたい。
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